相続まめ知識(5) 寄与分
被相続人の存命中に、その財産の維持・増加に貢献した人がいる場合に、その人の相続財産の配分を多くする「寄与分」という制度があります。
寄与分が認められるためには、単に被相続人に協力した、面倒をみたというだけでなく、その人の働きによって財産が増えた、あるいは減らずにすんだという事情がなければなりません。
寄与分の金額を決める際には、財産の増加額や浮いた費用の額など客観的な資料がベースになりますが、基本的には相続人間で話し合って決めることになります。相続人間の話し合いで結論が出ない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることとなります。調停でも話し合いが調わないときは、審判手続に移行することになります。審判では、裁判所が事実関係などを調べて、遺産の分割方法について判断を下します。調停は、当事者間の合意がなければ成立しませんが、審判は、当事者間の合意がなくても裁判所の判断が下されればそれに従わなければならない点が特徴です。
寄与分の計算例
寄与分が認められる場合、まず遺産総額から寄与分の額を引きます。そうして算出された額に法定相続分の割合をかけます。寄与分のない者の相続額は、この額です。一方、寄与分のある者の相続額は、この額に寄与分を加えた額になります。
【遺産総額2000万円 相続人:長男、次男、長女 長男の寄与分の額500万円】
遺産総額2000万円 - 寄与分の額500万円 = 1500万円
↓
寄与分のない者(次男と長女の相続額)
1500万円 × 法定相続分の割合1/3 = 500万円
寄与分のある者(長男の相続額)
1500万円 × 法定相続分の割合1/3 + 寄与分の額500万円 =1000万円
どういうことをしたときに寄与分が認められるの?
寄与分は、被相続人の事業を手伝ったり、お金を出したりしたときや被相続人の療養看護に努めたことにより、被相続人の財産の維持または増加に貢献したときに認められます。
より具体的には・・
- 被相続人が農業を営んでいたり、会社や病院を経営していたりした場合に、その仕事を手伝った
- 被相続人の介護をした
寄与分を主張するには、上記のような行為によって財産が増えた、または減らずにすんだという関係が必要です。そして、相続人と被相続人の関係からいって、通常期待される程度の家業の手伝いや介護をしても寄与分は認められず、特別な寄与が必要とされます。そこで、例えば娘の介護により、ヘルパーを雇う費用が浮いた場合には寄与分が認められますが、娘であればある程度親の面倒をみるのは普通ですから、浮いた費用全額が寄与分額として認められるわけではないのです。また、相続人が被相続人から給料などの対価をもらっていたら寄与分の主張は認められません(ただし、対価があっても非常に安い場合などには認められることもあります)。